第2回:商標出願のタイミング – 遅すぎると失敗する理由

「商品が売れ始めてから商標登録すればいいよね」って考えていませんか?実は、これが一番危険な落とし穴なんです。

今回は、商標出願の「ベストタイミング」と、タイミングを逃してしまった企業の実例をお話しします。

「売れてから」では遅い?

答えは「イエス」です。なぜなら、商標登録は「早い者勝ち」だから。

あなたが「○○クッキー」という商品を3年前から販売していても、今日誰かがその名前で商標登録してしまったら、その人の権利が優先されてしまうんです。「先に使ってたのに!」という気持ちは分かりますが、法律的には先に登録した人の勝ち。

売上が伸びて注目されればされるほど、その名前を狙う人も現れやすくなります。注目は成功の証拠でもありますが、同時にリスクも高まるということです。

商標出願のタイミング

理想的なタイミングは「名前が決まった時」です。具体的には:

 商品・サービス名が確定した瞬間

  • まだ誰にも知られていない
  • 競合も気づいていない
  • 出願費用も最小限

 本格的な宣伝活動を始める前

  • SNSで拡散される前
  • プレスリリースを出す前
  • ホームページを公開する前

「でも、売れるかどうか分からないのに登録するのはもったいない…」そう思う気持ちも分かります。でも考えてみてください。その商品やサービスは、貴社がお客様に自信をもって提供し、名前を覚えてもらいたいと思っているものではないですか?

実際にあった「先取り事例」

実は、こんなケースが実際に起きています:

ケース1:美容院「cache(カーシェ)」事件 東大阪市の美容室が「cache(カーシェ)」の店名を20年以上使っていましたが、他者に商標登録を先に取得され、権利者から商標使用の差止め要求を受けて「aisé(エゼ)」へ店名を変更。看板や届出も含めて急遽全面変更に。

ケース2:話題のアプリ名 中国発の人気ゲームアプリ「少女前線」は、日本展開時に同名商標が先に第三者に取得されていたため、日本市場では「ドールズフロントライン」へ名称変更。開発会社は名前の変更を余儀なくされ、せっかく獲得したユーザからの認知度もリセット。

ケース3:オンラインショップ 洋菓子ブランド「モンシュシュ」は、他社による商標登録を知らずに商品・店舗・パッケージでブランド名を使用していたため、訴訟で敗訴し社名・店名・サイト表示を「モンシェール」に改名。損害賠償は5000万円以上で、ネット販売や商標名の切替など多大なコスト・影響が発生。

怖いですよね。でも、これって実際に起きていることなんです。

早期出願のメリット

商標登録を早めにしておくと:

  • 安心してマーケティングに集中できる
  • ブランド価値を確実に自分のものにできる
  • 競合の模倣を法的に阻止できる
  • 将来の事業拡大時にスムーズに進められる

商標登録の費用は、名前を失うコストと比べたら本当に小さなもの。むしろ「ブランド保険」と考えると、決して高い投資ではありません。

まとめ:迷ったら「今」がベストタイミング

商標出願のタイミングで悩んだら、答えは「今」です。名前が決まって、その名前でビジネスを続けたいと思った瞬間が、ベストタイミング。

成功してから慌てるより、安心してビジネスに集中できる環境を早めに作っておく。それが賢い経営者の選択です。


次回予告:第3回「商標選びのコツ – 登録されやすい名前・されにくい名前」

「どんな名前なら商標登録できるの?」「普通の言葉じゃダメなの?」そんな疑問にお答えします。登録されやすい名前の特徴から、AI時代ならではの新しいネーミングトレンドまで、実用的なコツをたっぷりご紹介。ネーミングで悩んでいる方、必見です!

さわべ特許事務所

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