特許権者ではない発明者が、iPS細胞から作った網膜細胞の特許技術を使わせるように求める裁定を請求したと記事が伝えています。
https://www.asahi.com/articles/ASP9X5GYWP9QPLBJ01K.html
発明者が発明を企業や大学等の組織の職務として行なった場合、職務発明規程などで、発明者自身ではなく、組織が特許権者となることは通常ですが、発明者が組織を離れ、別の会社で特許発明を実施したいと考えたときに、特許権者でない発明者は、自由に特許発明を実施することはできません。
今回の場合は、特許権者が理化学研究所であり、理化学研究所がさらに他社と実施許諾契約等を結んでいるとのことですから、話がややこしくなってきます。
記事によれば、実施許諾契約等を結んでいる他社が治験を始めず、それなら、発明者が自社で治験を行いたいということで交渉を進めたようですが、合意に至らず、特許発明の実施の許諾を求める裁定を請求したとのことです。
経済産業大臣に裁定を請求したとのことですから、特許法第83条の「不実施の場合の通常実施権の設定の裁定」ではなく、特許法第93条の「公共の利益のための通常実施権の設定の裁定」が請求されたのですね。
裁定では、相手方の事情も相手方が答弁書を提出することで考慮されます。
どのような裁定が下されるか、注目したいと思います。
さわべ特許事務所
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