ITベンチャーA社での知財活用例
フェーズ1.新技術で起業(スタートアップ期)
新技術:立体画像生成プログラム
ビジネスモデル:自社プログラムを他のシステムに組込む形で提供し、プログラムが動作する装置ごとに所定の実施料を徴収します。
活用1:特許調査
- 新事業、新技術を実施する際に、類似する他社技術や障害となりそうな他社権利の存在を把握します。
→自社技術を説明する場面で、自社技術の特徴や競合技術との相違点を、他社技術との関係や技術動向を踏まえ、アピールできます。
→自社事業が成長した際に他社権利が問題とならないよう対策を取ることができます(警告された場合の反論ポイントの確認や、技術的回避、無効理由調査、実施許諾交渉等)。
活用2:特許出願
- 自社技術が新規な技術である場合、自社の将来の事業展開や他社への実施許諾を想定し、特許出願を行い権利化を目指します。
→権利化することによって、自社技術が新規な技術であることが公的に認められ、その技術を実施するためにはA社の許諾が必要になります。
→権利化することによって、A社の財産として管理することができます。
活用3:商標出願
- 自社事業で使用する商品名やサービス名、社名を商標登録します。
→他社による同一・類似商標の使用を防ぎ、お客様に求められる自社商品・サービスを提供することによって、自社商品・サービスの知名度のアップ、ブランド化することができます。
活用4:意匠出願
- 立体画像生成プログラムの操作画面の画面表示に特徴があるような場合には、意匠に係る物品を特定して意匠を出願し、意匠登録を受けます。
→意匠権を取得することによって、自社デザインを他社が模倣することを防止します。
活用5:宣伝・広告
- 権利の取得や存在を自社技術の説明とともにプレスリリースし、カタログや自社ウェブサイトで紹介します。
→他社による権利侵害を牽制し、自社の技術力、ブランド力をアピールできます。
活用6:アライアンス先、顧客候補探索
- 特許情報を検索することによって自社技術に関連する技術を出願している企業を検索します。
→自社技術の導入先として、例えば立体画像を特徴とするゲーム機やゲームプログラムを特許出願している企業や、CTやMRIの検査結果を三次元画像として表示する装置、プログラムを特許出願している企業をアライアンス先、顧客候補として抽出できます。
活用7:実施許諾契約
- アライアンス先、顧客に自社技術を提供するにあたり、契約内容を確認し実施許諾契約を交わします。
→自社技術の特許権に対する実施料を設定することができ、規模の異なる企業とも対等な立場で交渉することができます。
フェーズ2:事業の成長(成長期)
活用8:資金調達支援
- 投資や融資を受ける際の自社技術の説明資料、助成金、補助金等を調達するための説明資料として、特許出願書面や発明のポイント資料を活用します。
→特許庁による客観的な評価(権利取得)を得られていることと、出願時に自社技術の内容を明確化していることから、自社事業・技術内容とその優位性を十分に説明する、説得力のある資料を作成することができます。
フェーズ3:事業の拡大(成熟期)
順調に事業が成長することによって市場での注目度や売上が上がり、他社から権利行使の対象とされる場合も多くなります。
活用9:権利行使への対応
- 他社権利に基づく警告状を受け取ったり、自社権利に無効審判を請求された場合、適切な対応を検討し実行します。
→自社で保有する権利を活用した対応や、これまでに蓄積した知財に関する知識、経験に基づく対応を取ることができます。
活用10:知財戦略の深化
- 自社事業や技術、ノウハウを知財活動によって「可視化」することによって、事業を推進するなかで生み出された知的財産を、さらにどのように活用し事業を発展させていくかを検討し実行していきます。
- 成熟期に新たな技術の研究開発を行い、新規事業を展開することによって、フェーズ1〜3を繰り返し、A社は継続してさらなる成長を続けていくことになります。